日本人の高血圧パラドックスに挑む
~体質とMRAから考える治療戦略~
勝谷医院 院長
日本臨床内科医会 理事(学術担当)
勝谷友宏
和歌山県立医科大学を卒業して37年、恩師の有田先生に座長をしていただき、和歌県医師会内科医会の先生方に講演をさせていただけることに感謝申し上げたい。最新の高齢社会白書では、わが国の高齢化率は29.3%に達し、まもなく救急搬送される患者の半数が85歳以上という時代が到来する。健康寿命延伸のためには、脳心血管病、認知症、サルコペニア予防が重要であり、患者数が内科で最も多い高血圧に対する介入は、費用対効果の面から最も優れることが知られている。高血圧診療に100%近い医師が満足と答える一方で、血圧コントロール率は韓国の半分、高所得国の中で下から2番目という状況は「高血圧パラドックス」と呼ばれている。
この状況を打破するためには、一般住民も血圧を測ることが肝要で、日本高血圧学会では公共の場(市役所や薬局など)におかれた血圧計で測定するキオスク血圧を推奨し、収縮期で130mmHgを超えていれば注意喚起する「血圧朝活キャンペーン」を実施している。昨年発表された高血圧管理・治療ガイドライン(JSH2025)に準拠する形で、日本高血圧協会の血圧手帳も改訂されており、正しい測定と記録の方法、生活習慣に関する留意事項なども手帳の冒頭に記載されており、ぜひお買い求めの上、ご利用いただきたい。ガイドライン改訂のポイントは、元気に外来受診される方であれば「年齢を問わず<130/80mmHg」が降圧目標であり、家庭血圧では<125/75mmHgとなる。要介護状態の高齢者では、その程度に応じて個別に目標設定が必要だが、それ以外は100歳であっても上記目標でOKである。
日本人は白人などに比して食塩感受性が遺伝的に高い民族であり、減塩やナトリウム利尿効果のある薬剤はより効果的である。しかしながら、降圧薬使用はカルシウム拮抗薬とARBの頻度が圧倒的に高く、サイアザイド系利尿薬やβ遮断薬の頻度が低いことから、JSH2025ではこれら薬剤をG1bの一次選択薬(STEP1)と位置付け、より積極的な使用を促している。これに加え、ARNIやエサキセレノンに代表されるMR拮抗薬はSTEP2の2剤目として位置づけられ、より早期での使用を推奨している。本講演では、生活習慣改善のための指導のポイント、降圧薬の選択などについて述べるとともに、高血圧パラドックスを解消し、和歌山県の健康寿命延伸に資するような情報提供に努めたい。